22/01
29
若駒広場

懐かしい文章

何を隠そう私は、読む本が手元にないと不安になる活字中毒者である。昔は小遣いが許す限り本を買っていたが、置くスペースも困るようになり、以来県立図書館のヘビーユーザーになった。おかげで小遣いの節約になり、県民税も元はとれているはずだ。もし、震災があって、どこかに閉じ込められるようなことになるなら、県立図書館がいいとさえ思っている。

先日も県立図書館に行ってぶらぶらしていたら、原真さんの「快楽登山のすすめ」という25年くらい前に出たエッセイ集があったので、なんだか懐かしくなり借りてきた。

原真さんは、名古屋市千種区にあった原病院という病院の医師で、かつ日本のヒマラヤのアルパインスタイル登山の先駆的な取り組みをしてきた人だ。十数年前に亡くなったという記事を新聞で読んだ。

私のような末端アマチュア登山愛好者が、知遇を得ることもないわけだが、ちょうど私が山岳会に入ったころに原さんは「岳人」にエッセイを連載されており、書いている文章がとても辛辣なので、きっととても怖い厳しい人なのだろう、と思っていた。

当時は、この病院の前を通るたびに、「ああ、ここがあのハラマコトの病院かあ…」と有名人がこんなに近くにいるんだ、と妙に感慨深く病院を見た記憶がある。

原さんの死後、原病院の看板が違う病院に変わった。最近、その病院も同じ区内に移転し、今は跡地がコインパーキングになっていることを知った。なんだか、少しさびしい気持ちになった。