
霞沢岳2つの登り方
目的意識と楽しかった所を分けて報告してみたいと思います。どちらに興味があり、どちらのの登り方を選択しますか?どちらのスタイルで山を登ってもいいんです!でも、とちらのスタイルにせよ段階を踏んで登りましょう!
まずは目的意識をもって山行に取り組んだ感想から…
昨年は大荒れの天気で計画を中止した霞沢岳へ冬期限定ルートの西尾根から2/15-16の2日間かけて行ってまいりました。山行目的は厳しい厳冬期の雪山対応としつつ北アルプスの中でも比較的天候が安定している霞沢岳をチョイス。今シーズン初の本格的な厳冬期雪山登山ということで厳しい山行になることへの緊張と覚悟をもってのぞみました。2/15の0時過ぎに沢渡駐車場に着き車中で充分に仮眠をとり8:46発の中ノ湯行きのバスへ乗り込み9:00過ぎに釜トンネルの入口に到着。入り口には北アルプス南部地区遭対協の係員が常駐されており霞沢岳西尾根のやせ尾根でのすれ違いに注意するようアドバイスをいただき出発。しかし周りを見渡す限り15Lほどのザックにスノーシューをぶら下げた上高地トレッキング目的の軽装カップルが多数をしめ、100Lのザックに輪カンとアックス姿でどこへやらという感じで西尾根を目指します。今日の山行プランは2/16から天気が下り坂の予報をみて天気が確実な2/15のうちにピークを踏み下山途中でテン泊して下山としました。西尾根の取り付きから急登の始まりというか稜線までずっと急登が続きます。雪は固く締まっており気温も高く残雪期並みのコンディションに「ホッ」としている自分を感じつつもフル装備で厳冬期にこれだけの急登を登る機会はそう経験できることではないので丁寧なアイゼン歩行を心がけながら登りました。しかし荷が重い分、踏み跡を踏み抜いてしまうことが多々あり、これを新雪の急斜面や凍った斜面でやってしまうと即滑落につながる危険があります。滑落停止というのは踏み抜いた瞬間、滑落する前に止める行動であって、いったん体が滑り始めると、とても滑落停止程度の制動では止める事はできません。空身とフル装備ではアイゼン歩行の感覚が違うということを身をもって体験でき、バリエーション山行へ行くには、まだまだ自分はアイゼン歩行の訓練が必要だと感じました。
やせ尾根では先行者が雪庇を踏み抜いた跡があり、雪山で先行者のトレースをただ辿るのでなく、雪崩地形に入り込んでいないかを自分で判断し、藪や立木から地形を想像し雪庇を踏み抜かないようにトレースする位置を自分で判断しながら登山することを改めて感じました。そして途中、2箇所ほど尾根筋が分岐しているところがあり、下ってきた先行者が間違えそうになっている単独者と別のPT先頭を歩いている人へ声掛けして正しいルートへ下ってもらうということがありました。積雪期に限らずバリエーションルートでは、分岐では必ず現在地と進むべき尾根筋を確認する習慣を身につける必要性を強く感じました。
また頂上付近の尾根筋は積雪量が少なく強風域であることが想像できます。森林帯においても吹き溜まりができているところも同じく風が吹き込んでくる場所であることが想像できます。積雪期にテントを安全に張れる場所の判断としてスペースがあればどこでもよいというのでなく積雪の状態から風の向きや強さを想像し、必要ならば雪のブロックを積み夜中の強風に備える等の判断が必要なことも改めて感じることができました。最後に下山中に強く感じたことは登れても下れないということです。積雪の多い斜面でフル装備の登りでは力でなんとかキックステップを使いアイゼンを効かせながら登れても下りでは踏ん張った足で踏み抜くリスクがあり訓練されたアイゼン歩行の技術と技能が必要です。そして帰りのバスまで時間があったので雪崩れのリスクについて知見を増やす目的で下山後に安全な場所でコンプレッションテストをしました。安全に登山をするには、積雪による不確定要素なリスクを考慮してロープなどの装備と、使える下降技術や雪山登山の知識と技能を習得してから雪山へ入るべきだと強く感じることができる山行になりました。
次に楽しかった部分の感想です…
穂高連峰が一望できる霞沢岳(2646m)へ冬期バリエーションルートでは入門レベルとして人気が高い西尾根から2/15-16の2日間をかけてのんびり山行へ行ってまいりました。15日は高気圧に覆われ冬期としては比較的あたたかく快晴無風。しかも、しっかりと踏み固められたトレースがあり急登も階段状になっており登りやすかったです。下部の森林帯では立木を縫うように、倒木はくぐりながら、穂高連峰を横目に急登を喘ぎながらもぐんぐん標高を上げていきます。途中すれ違う先行者からも今日の展望は最高ですよ!と声をかけていただきテンションも上がっていきます。2000mの手前あたりからテントが張れそうな平らなスペースがあり、2050mあたりの尾根筋が分岐する所にテント泊装備をデポし荷を軽くしてピークを目指しました。森林帯を抜けてやせ尾根をスリリングに抜け霞沢岳ピークまでの尾根筋は、360度の大パノラマの景色を眺望しながら、ゆっくりゆっくりと景色を楽しみながら歩きました。
バスの発着の時間に合わせて、今日は下山途中でテント泊ということもあり出発ものんびりで山頂には14:30頃に到着。さすがにこの時間には誰もいない中で大パノラマを贅沢にも私たちパーティで独り占めでした。山頂では少し冷たい風がありましたが、お日様の暖かさを全身に浴びながらテント泊装備をデポした地点まで下りテントを設営して暖かい飲み物をと食事を取り、いつもの早い時間からしっかりと爆睡できました。16日は13時のバスに間に合うように下山するだけです。昨日の夜中は激し風の音がしていましたが、テントを設営した場所は無風で快適に過ごすことができました。積雪はトレースが消える程度ありましたが、朝一番に山頂へ向かったパーティがしっかりとトレースをつけてくれていて下山では尻もちをつきながらも快適に降ることができました。バスまでの時間もあったので、下山後に空身で大正池までスノートレッキングをし、厳冬期の穂高連峰を堪能し坂巻温泉で温まり帰路につきました。冬期人気のバリエーションルートということだけあって登山者も多く、岩稜帯の下りは残置ロープが張られているものの慎重に下る必要がありますが、天候に恵まれれば入門ルートとして楽しめるルートだと思います。