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9月29日の夜~10月1日に、北岳バットレス第4尾根主稜に行ってきました。

今回は、ぬけるような秋晴れの中、気持ちのいいクライミングができました!

「北岳バットレス第4尾根主稜」なんと長い名前! バットレスには第1~第5尾根まであり、みなさん「よんおね」と言っています。現在登攀の対象になっているのは第4尾根と中央稜くらいだと思いますが、今回われわれが行ったのは、「よんおね」でも一番やさしい主稜と言われるところです。

第4尾根主稜は、戦前に初登されたクラシックルートで、グレードは高くないけれど、富士山に見守られて?ほぼ北岳頂上直下に抜けるという日本を代表するアルパインルートです。以前は勤労者山岳連盟愛知県連の登山学校でも、研修山行で行っていました。

今回は、広河原まで一般車両が入れなくなり、16時40分の広河原発の最終バスに間に合わないと帰れないという事情もあり、早く取りついて、早く登攀を終えないといけないということで、白根御池ベースで、クライミングパーティーが少ないと思われる金曜日と土曜日という日程にしました。

29日の木曜日の夜に名古屋を出発。新東名から中部横断道を経て、深夜に芦安の駐車場に着きましたが、平日なのに結構車が停まっていてびっくり。

翌30日に、朝一番のバスで広河原に入ります。バスの中では、ガイドさんが林道から見える山や南アルプスの成り立ちなどを説明してくれましたが、今回の同行者のHBさんは、ちょっと車酔いをしたようで、広河原に着いてから、しばし休憩。

リニューアルしたインフォ広河原インフォメーションセンター。とても立派できれい。

 

ここから少し歩くと、つり橋があり、いよいよ入山です。

広河原からもバットレスは見えます。あそこをノボルノダ。バスのガイドさんも、こんなきれいな青空は久しぶり、と言っていました。

今日の宿は、白根御池です。小さな池がある気持ちのいいキャンプ場。小屋もあって、まだ新しく旅館のようなたたずまいでした。

始発のバスで来たので、着いたときはまだ人が少なく、立地のいいところにテントを張れました。平日なのに、結構な人があがってきました。ざっとテントは20張くらい。複数で来ていても、ひとりずつテントを張っている人もいます。

広河原から白根御池は2時間ほどで着くので、テントを張ってからは、バットレスの下部岩壁の偵察に行きました。

第4尾根の主稜のとりつきへは、いくつかアプローチがありますが、今回われわれは、Bガリーの大滝というところから、第4尾根主稜のとりつきに行く計画です。Bガリーの大滝には(たぶん)4回ほど来たはずなのに、ずいぶん前のことなので、記憶もおぼろげ。

なんとか記憶をたどって行きました。

バットレス沢の入り口。ここから沢の右岸に付いた踏み跡をたどります。

途中からガラガラした急登になります。正面のつるっとした岩場がBガリー大滝です。

テントを出てから、少し迷いながら2時間ほどで、Bガリー大滝の基部に着きました。基部に古いハーケンが打たれていることを確認。明日はこれを登ってアプローチします。

偵察から帰ってもまだ12時くらいだったので、小屋で買ったビールを飲んで、気持ちよくお昼寝。この時期にしては気温も高めで爆睡してしまいました。夜はカレーライスとワンタンスープ。テント場では、取りつきライバルになりそうなパーティーを物色。4,5パーティーはいそうです。とはいえ、あまり早く出ても、暗くて登れないので、3時半出発として就寝。

10月1日、2時半起床。ラーメンを食べて、3時半に出発。ほかのパーティーも考えることは同じで、ヘッドランプの明かりが、いくつも後についてきて焦りながら歩きます。「蜘蛛の糸」のカンダタになった気分。

われわれの前には、すでに2人パーティーのヘッドランプの明かりが見えます。彼らは、前日Dガリー大滝から取りつくと聞いていたので、2番手で歩いていてもBガリー大滝には一番で取りつけると安心して歩いていきました。ところが…暗闇の中、昨日偵察したはずの踏み跡を見失い、右往左往していたら、後続3パーティーほどに追いつかれてしまいました。OH,MY,GOD!これは今日中に帰れるか??

ところが、みなさんは、どうもDガリー大滝から行くそうで、また安心。

ちょうどBガリー大滝の基部の到着したころ、振り返ると東の空が白み始めました。美しい時間帯の始まりです。

しばらくぼーっと見ていたかったけど、そうもしておれない。

第4尾根主稜の基部に行くには、Bガリー大滝は2ピッチ登り、踏み跡をたどって、Cガリーを横断して、ヒドゥンガリーを登って、やっと着きます。

↓ Cガリーは浮石が多く、落石すると下部にいる人にあたるので、要注意です。上部からの落石も注意。

テントを出てからすでに3時間半。やっと主稜の基部に着きました。

基部では、2人パーティーとロープソロのお兄さんが先行しています。われわれは3番手でした。先行のスピードも早いので、長く待つことなくクライミングができました。

振り返ると富士山。

今回は2人でツルベで登ったので、互いの写真を撮ることがあまりできませんでした。

↓ 枯れ木のテラスに向かって登る先行パーティー。

↓「マッチ箱」から懸垂下降しようとする後続パーティー。

枯れ木のテラスに向かっているとき、後続のフリーソロのお兄さんに抜かされました。怖くないのかなあ??

↓最終ピッチの「城塞ハング」を登ってくるHBさん。

10:15クライミング終了。お疲れさまでした! 後続パーティーもいるので、主稜基部から、飲まず食わずで登り続けて、のどがカラカラ。

 

終了点から20分ほど歩くと、北岳ピークです。たくさんの人で賑わっていました。快晴で、北アルプス、甲斐駒、仙丈、中央アルプス、御嶽山、八ヶ岳など周囲の山が一望できます。

帰りは、バットレスの全容が見える、八本歯のコル経由で大樺沢を下山。下りてくる途中、目を凝らすと、城塞ハングの基部と第4尾根主稜の基部にクライマーがいました。

あとは、帰りの交通機関の時間にも間に合いそうなので、ゆっくりテントをたたみ下山。

広河原に着いて、最終バスの時間までまだだいぶ時間があったので、乗り合いタクシーで芦安まで行って、白峰会館でお風呂に入って帰りました。早朝テントを出てから広河原まで約12時間かかった。長い一日になりました。

↓ 帰りに立ち寄った南アルプス市の「まぐちゃんラーメン」。煮干しだしが自慢らしい。けっこうはやっていた。お店に入ってすぐにお客さんむけの非接触型の検温器があって、正常値のシグナルが出ると、そのたびに若い女性店員が「だいじょぶでーす」と言っていた。入店を許された気分。でも、誰に向かって言っていたのだろうか?

今回の山行は、HBさんは初めての、私にとってはたぶん5回目?の北岳バットレスでした。といっても、枯れ木のテラスの上部が2010年に崩壊してからは来ていないので、前回は、少なくとも15年は昔の話だと思います。

北岳は何回か来ていますが、はじめて視界のきく北岳のピークに立てました。

暑くも寒くもなく、天気にも恵まれ、先行パーティーも少なく、順調に登れたことはとても幸運でした。

ただ、北岳はまだ一年に数ミリずつ隆起しているそうで、岩壁もひずみがたまっていくでしょう。岩はチャートという節理の発達しているもろい岩壁です。次回いつ崩落が起きてもおかしくないといわれています。

今回も2010年の大崩落の跡をみて、あらためて自然の怖さを目の当たりにしました。

 


山行データ 1日目

山名・山域北岳
山行ルート第4尾根主稜
日付2022.09.30~10.1
所要時間第4尾根主稜自体は3時間ほど。
山行人数2人
天候快晴
山行記録1日目
6:30 広河原
8:40 白根御池
9:15 偵察出発
12:40 帰幕

2日目
3:30 出発
5:15 Bガリー大滝基部
7:05 4尾根基部
10:15/10:35 終了点
10:55 北岳ピーク
11:40 八本歯のコル
13:15/13:50 白根御池
15:20 広河原
備考先行パーティーが速かったので順調に行けた。もっとパーティーいたら、その日のうちに帰るのは難しいかも。

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